流星☆コミュニケーションノート④

不真面目な部員に頭を抱えた部長が始めた交換日誌。
幸地先生が血文字赤ペンでちょっとだけ返信します。

表紙の裏に書かれたルールは以下の通り。
担当の者は月曜に顧問に提出すること。 
顧問火曜に部室の所定の場所へノートを返却


皆さん、星浜祭お疲れ様でした。
「ケモミミ執事喫茶『エンドレスパーティ』」
と題して、今年のUMA研究会は執事喫茶を営業しました。
執事喫茶×ゴシックホラー×ケモミミという奇天烈なコンセプトは、
ハロウィンが近かったから取り入れてみたとか、
チカちゃんたちのオリジナル設定がすごかったとか、
そもそも僕たちのASの存在自体がイレギュラーというか、
そのような偶然の重なりから生まれてしまったものです。
・・・振り返ってみても、なんてカオスな執事たち・・・。

メニューのブロマイドは事前に撮影していたイメージ写真です。
実際にはシフォンケーキと紅茶でお客さんをおもてなししました。
これでUMA研究会の活動内容をまともにアピールできたかどうかは、
まあ、かなり怪しいと思いますけど・・・。
「楽しそうにやってる部活だな」というのが伝わったのなら、
とりあえず、それで十分なんじゃないかと思っています。
後々、執事喫茶部と勘違いされたら困りますけどね・・・。

はい。記録を前提とした前置きはもういいでしょう。
本題です。

【アフター星浜祭☆UMA研究会、秋の大反省会】

各執事の働きを☆の数で評価&コメントしました。
下段は各執事のコメント、もしくは言い訳です。
いわゆるインタビュー形式になっています。どうぞ。

【 ブラックレオン昴 ☆☆ 】

意外とまともに働いてましたよね。
――短い間だけど、喫茶店でバイトしたことあったからなー。
いち早くお客さんのコールに気付いていました。
――そりゃ気に掛けるっつーか、まあ一応、執事設定なわけだし・・・。
でも自分の名前くらい照れずにちゃんと名乗ってください。
――ブラックレオンですとか言えるか! なんつう名前にしたんだよっ!
あとお嬢様に触られたくらいで逃げるのはデリケートすぎでしょう。
――こっそばゆいだろーが! おさわり禁止ってメニューに書けよ!
暇な時間、メイドさんばっかり見ないでくださいよ。いやらしいです。
――い、いやあれは違っ・・・ひらひらふわふわしてて動くもん見てただけで
別にいやらしいとか、そういうそんなんじゃねーし全然!!


【 フェンリル朝日 ☆☆☆☆ 】

エスコート、スマイル、アフターフォロー。完璧な接客でした。
――ワ~~イ♪ 星治にホメられた! うれしいナ~。
紅茶の淹れ方上手すぎですよね。お世辞なしに美味しかったです。
――ワーイワーイ♪ Balのブレンドが絶妙でショ? コレお家芸!
事前準備のこと。執事・メイドの演技指導がスパルタで・・・。
――ボク、おじいちゃんのパーティで本物の使用人サンたち見てるカラ、
どーしてもキビしめになっちゃう。でもみんな優秀な生徒サンたちだったヨ♪

あのう、放課後に着替えをしていたときに首の拘束具を外しながら
ふざけて「ガオー」って暴れた勢いでメイドさんというか美空先輩に
――わわっ、それナイショの約束でショ? しーっしーっ▽>ェ<▽ノシ

【 ナイトメア星治 ☆☆☆ 】

設定だからと棚にあげて客のケーキをねだるのはどうなのか
――設定ですから。僕はキャラを忠実に守っただけですから。
設定だからハラペコだと言って休憩中にケーキを食べてたのは
――ええ、設定ですから。腹が減ってはいくさはできぬですし。
そのうえ余った材料でクッキーまで作ってもらって、つまみ食い・・・
――仕様ですから。そのくらいの楽しみがあったってバチ当たりませんよ。
部員の総評:本当は人見知りなのによく頑張った
――まあ、部長ですから。・・・どうもありがとうございます。

【 クリスティアン銀之助  ☆☆☆☆☆ 】

眼鏡を外した上に隻眼での接客、本当におつかれさまでした・・・。
――お皿はひっくり返すし、紅茶もあちこちにこぼしちゃったなあ・・・
みんなでフォローさせてごめんよ。ありがとう。
まさかチカちゃんたち、顧問である先生まで駆り出してしまうなんて。
――「衣装の寸法が規格外!燃える!」って。向上心があるのはいいことだよ。
でも、なんというか先生の設定・・・全体的に濃いです。
――「堕落した聖職者キャラ!萌える!」って。うーん、萌え・・・?
そういえば学外のお客さんが先生を本物と勘違いして帰っていきましたけど。
――「生きてればいいことあるわよノッポの神父さん!」ってね・・・。
だけどあの人、教育委員会の偉い人だったような・・・気のせいか。うん。


【フェニックス彗斗伯爵 ☆】

予想はしてましたけど、先輩の設定だけ明らかにヒイキされてますよね。
――おい君、この評価は不当すぎるだろう。撤回しろ。
スローなリズムでワインゼリーを傾けるだけ。楽なもんですよね。
――蒸し返すな。テーブルを回って十分伯爵らしくもてなしたぞ。撤回しろ。
メイドに扮した美空先輩に恥ずかしそうに「ご主人様」って呼ばれるたびに、
素知らぬ顔で返事しながら、演技するフリしてマントで口元隠して
それはもうニヤニヤニヤニヤしてましたよね。働いてください。
――いちいちそんな所まで見てっ・・・君、物凄く暇だろう!?
しろねこみみ(爆笑)
――表に出ろ。

【 マリー千香・メアリー千子(部員ではないので評価なし) 】

――知り合いの古着屋さんにヘルプしてもらっちゃった!(チカ)
――先生のサイズだけどうしても見つからなくて苦労したよね~(チコ)
――せっかく自作したし、これで終わらせるのもったいないよね(チカ)
――そうそう! このままの勢いで映画でも撮っちゃいなよ~(チコ)
――私たち、従順なうさみみメイドとして伯爵の足元にかしずくよっ♪(チカ)
――渡先輩にならワガママに命令されたい♪こき使われた~~い♪(チコ)
実際、ケモミミ喫茶店の成功はスーパーうさみの協力なしには
有り得なかったので、もう何も言えません・・・。はぁ・・・。

【 フランシェスカ美空 ☆×∞ 】

ヒイキじゃないです。妥当な評価です。
もうこうなったら伯爵やエクソシストを敵に回してもいいかなって、
トンデモ設定の中でさえ真剣に考えこんでしまうほどの魅力・・・。
伯爵隷属派、令嬢救出派、使用人団結派に分かれて、
メイドを死守するための防衛戦が繰り広げられてもおかしくないです。
かわいい! かわいかった!! ほんとにかわいいんです!!!


・・・あ、そういえば。
前回の海水浴と違って、今回の写真撮影は美空先輩が担当したので、
フィルムは美空先輩が持ってるんでしたっけ?
どうりで焼き増しが男子の間で出回らないと思っ・・・
いえ、なんでもないです。
先輩、部誌に記録として残しておきたいので今度持ってきてくださいね。
何よりも最優先事項でお願いします。

星浜祭、本当にお疲れさま。
当日の頑張りはもちろん、長い間の事前準備も、
朝早くから来て夜遅くまで学校に残って、よく頑張ったね。
普段と変わらず勉強もしなくちゃいけないのに、
本当に大変だったと思うよ。
でも、そんな風にバタバタして忙しい最中でも、
みんなはいつも通り、わいわい楽しそうにしててさ。
ふざけたり、じゃれ合ったりするだけじゃなくて、
キチンと締める所は締める。前向きで、メリハリがあって。
お互いに協力し合って、いい星浜祭にしようと生き生きしていたね。
この明るい雰囲気こそUMA研究会にとって必要不可欠なんだなぁ。

特に今回、部員を影で支えてくれてたのは渡くんだよな。
委員会との交渉なんて、相手は2年や3年ばかりで、
1年で部長の星治にはちょっとキツイ環境だったから。
それをわかって、渡くんは対外交渉を一手に引き受けたんだね。
「先輩ですから当然のことです。僕にとっても最後の星浜祭ですし、
少しは動いてみようかなって思っただけですよ」
なんて苦笑いしていたけど、とても優しくていい先輩だね。
星治も、本当は渡くんにすごく感謝してるんだよな。

だからその・・・先生、たぶんわかっちゃったんだけどさ。
星治。その男子部員に対する評価は、つまりあれだよな?
執事が仕事中にどれだけメイドさんによそ見してたかって、
その度合いを☆の数で表してるんだよな・・・。
よく気が付くよって感心したんだけど、ああそうか、
変身していたから周辺視野がヒツジ並みに広がってたんだな。
だから渡くんがニヤニヤしてたのも目についてしまったと。
ちなみに俺は、当たり前だけど、なんにも見えてなかったよ。
ははははは。はぁー・・・・・・。
・・・写真かぁ。

幸地


俺が美浜町に住むようになる前、まだちっせー頃にはさ、
お盆の時期になると、じーちゃんちに遊びに行って、
夏の海で泳ぎまくって、浜辺ではカニを捕まえて、
縁側でスイカ食って、じーちゃんが釣った魚焼いてと、
そりゃもう、いかにも夏休み~ってのを満喫してたわけだ。
星降美浜も海水浴に来た観光客で毎日にぎわってて、
体を真っ黒に焼いたコワモテでガタイのいい兄ちゃんたちが、
「ようボウズ、カキ氷食うか」ってかわいがってくれたりもしてさ。
だから俺、海ってのはそういう所だと思ってたんだよ。
暑くて、楽しくて、ちょっと騒がしい場所なんだって。

でも美浜町に住んで、海のそばで暮らすようになって、
イメージが変わった。つーか、ホンモノを知った。
海は、年がら年中ゴキゲンなわけじゃない。
夏が過ぎると、湿った冷たい潮風がガンガン吹き付けてきて、
これがまた身に染みるんだよな、じわじわと体温をもってかれる。
気温も水温も毎日ぐんぐん下がってくってのに、
日差しは、むしろ夏よりキツく感じる日だってある。
12月の星降美浜にいたら、いつの間にか日焼けしてたっけな。

何より冬の海が夏と違うのは、人がいないってことだ。
サーファーとか、俺みたいに写真を撮りたいヤツとかは別として、
基本、地元民しかうろつかなくなるだろ。犬のさんぽとか。
んで、よく知らねーけど潮の満ち引きの具合も変わるらしく、
夏にはビーチバレーしてたはずの砂浜にまで波が押し寄せて、
その下に埋もれてた岩場が洗い出されたりして。
ここって、あの星降美浜だよな? 別の浜辺と間違えたか?
そのくらい雰囲気も姿形もどんどん変わってく。
ゴキゲンからは程遠い冬の海、最初はビックリしたな。

・・・いや、別に。
なんでこんなこと書いてるかっていうと、最近寒いじゃんよ。
この日誌を始めた頃は、たしか夏真っ盛りだったな~ってさ・・・。
2学期入ったら体育祭の練習でひたすら走って、
体育祭が終わったかと思えば、すぐそこまで星浜祭が近づいてて。
ネコ耳になれとか、その上わけわからん執事のコスプレしろとか、
渡の飼い猫になれとか、んなのマジ勘弁しろ冗談じゃねーよって
ああだこうだ言って準備してるうちに・・・その星浜祭も終わって。
これでようやく一息つけるって思ったら、もう11月か。
きっと、冬が来るのもあっという間なんだろうな。

でもさ。
観光客は夏が終わればいなくなっちまうけど、
俺たちは秋も冬も、その先の春も、この美浜町にいる。
今はもう、熱い夏の海だけじゃなくて、
さびれて見える静かな秋の海も、
寒くて凍えそうになる冬の海も、
まぶしい春の海も、全部知ってる。
・・・知れて。美浜町に住んでて、よかったってさ。
ホント退屈しねーなって、最近、そう思う。

・・・。今日はまた何書いてんだ、俺?
あーそうだ、さっき教室でそういう話をマーベルとしてたんだ。
だからだ。あいつのせいだ。そうだそうだ。
別に、秋だからってセンチメンタルになってるわけじゃねーしっ。
ツッコミ不可。以上。終わる!

追伸:
美空のやつ、とにかく恥ずかしいからって例の写真出さねーし。
他人のネコミミ執事写真撮っといてよく言うよなー。
でもまあ、本人がイヤならしょーがねーだろ?
あれは幻の一枚ってことで。なっ。

このコミュニケーションノートを始めて、
本当によかったと思ってるんだ。
毎週、みんなが書いた日誌を読んでいると、
たくさんの新鮮な発見があって、とても楽しいよ。
五月くん、最初の頃は日誌がすごく面倒くさそうだったよな。
3行書くのに30分もかかってたんだろ?
だけど今では、星治や渡くんが傍で急かさなくたって、
当番の日には率先して日誌を書いているじゃないか。
・・・気持ち、漢字を使う量も増えてきたんじゃないのかい?

五月くんが日誌を書いてくれて、何よりうれしいのはさ、
君が自分のことを教えてくれるようになったことなんだ。
先生、今まであまり意識してなかったんだけど、
君って、1対1の時ならともかく、たくさんの人の前で
自分のことを進んで喋りたくはないみたいから。
結構、注目されるのが苦手なタイプなんだよな。
だけど日誌だったら、自分の気持ちや思っていることを、
こうして部員のみんなに伝えてくれる。

先生も君と同じ気持ちだよ。
美浜町に来てよかった。
みんなのことを知ることができてよかった。

ところで、星浜祭の写真の件だけど・・・。
五月くん、妙にサッパリと諦めてないかい?
先生、人を疑うことはよくないと思うし、
君たちにはまっすぐな心で育って欲しいと思うから、
あんまり、しつこく追及はしないけれど。
・・・前回のことがあるからなぁ。
また、冷や汗をかくような展開になるのだけは勘弁だぞ?

幸地

――ツッコミ不可って書いただろーがっ。
あ~~~もう次は3行で終わらす。(五月)


――五月くんと幸地先生ほのぼの劇場の途中ですが(チカ)
――ここで、チカチコ臨時ニュースをお伝えしま~す!(チコ)
――お前ら部員じゃねーのに乱入しすぎだろ!(五月)
――なんと! この美浜町に取材が来るらしいよっ(チカ)
――は? なんだそれ(五月)
――詳細は今週の金曜日、追って沙汰す!(チコ)

【11/18(金)ブログ更新をお楽しみに♪】

――以上でーす♪(チカチコ
――いや、もっと情報よこせよ(五月)
――せんせー、五月くんが生物の時間に居眠りしてましたー(チカ)
――ついでに古文も日本史も寝てたらしいでーす(チコ)
――そういう情報はいいんだよ!(五月)
――以上、マーベルくんからのタレコミでしタ☆(マーベル☆)
――お前かーーーーー!!(五月)


う、うう、うぅぅ~~~~~~~~~~(((▽>ェ<▽ノシ)))
さむい! さむ~~~い! ひえひえのブルブルだヨ~~。
ボクが生まれたのはトルコの南、地中海沿岸の町だったカラ、
一年じゅう、とってもあったか~いトコだったんだよネ。
11月なんて、お昼は30℃近くあるカラ、泳ぐのにちょーどイイ!
あ、ちなみに夏はフツーに40℃こえちゃうんだヨ♪
たまに50℃の日もあるケド、アレはさすがにグッタリしちゃう・・・。
な~んて、トルコの暑さを思い出してサムさをまぎらわしてるケド、
Üzülmeyin!! シンパイごむよう!!
これも日本の秋だナ~って思えば、ココロはウキウキ♪
いつもどーり、にっこにこなマーベルくんだヨ(^v^)b
ハロー! 元気だしていきまショ~~~~☆☆☆

最近、チョット考えてるコトがあるんだケド、
みんなもいっしょに考えてくれるカナ??
それはネ~・・・ズバリ、しんにゅー部員をかんゆうする方法!!
部員がふえたら、UMA研究会はもっとワイワイするはず♪
でも、この部活に入るには、いくつかのキビシ~イ条件が・・・。

その1! とにかくヒミツを守れるヒト!
その2! 五月がネコミミに変身しても笑わナイ、ココロの広いヒト!
その3! センセが陸でおぼれたら水をかけてあげたり、
おナカぺこぺこのせーじに自分のオヤツをわけてあげられたり、
そんな気づかいのできる、やさし~いヒト!
その4! 竜巻にまきこまれたり、力いっぱいパンチされても
ぜんぜんへっちゃら! 丈夫でタフなヒト!
その5! なにより、ASでケモミミに変身しちゃうヒト!?

このポスターにビビッときたら、今すぐ生物室へアクセス!
なんてどう? どう? 集まってくれるカナ~。

んっと、なんでこんなコト考えてるかってゆーと。
来年、渡センパイが卒業したら、さびしくなっちゃうネ~って。
先週はそんな話を五月としてたんだヨ。
そしたら・・・
「お前はトルコの王子サマだし、戻って来いとか言われねーの?」
って。さすがは五月、するどいツッコミ!
んー・・・ちょっとだけ、ボクのお話してもイイ?

ボクは、夏に美浜高校に転校してくるまで、
ずっと、ずーっとお船で世界中を旅してたって知ってるよネ?
船の旅は長いケド、おじいちゃんといつも一緒で楽しかった。
でもネ・・・ネットの海でペンパルと話したり、
旅先の国でいろんなコトを経験するうちに、
ボクは、ボクのフツーがフツーじゃナイと気づいた・・・。
もっともっと、友達とふれ合いたい。
同じコトをして、同じモノを見て、同じ場所を歩いて、
みんなが過ごしている、同じ時間を生きていたい!
おかあさんと相談して、ボクは日本に行くことに決めた。
・・・そしたら、反対したおじいちゃんと大ゲンカ!
実は、いまでもちょびっと、ケンカのまっさい中。
トルコは家族をとっても大切にする国。家族が何よりの宝物。
Öpülecek el ısırılmaz… 尊敬するヒトを傷つけてはいけナイ。
大好きなおじいちゃんと別れるのは、ボクもつらかった・・・。

でもネ、トルコにはこんなことわざがあるヨ。
“ Dağ dağa kavuşmaz, insan insana kavuşur. ”
「山は山にめぐり合うことはないが、人は人にめぐり合う」
山はそこから動けナイ。
だけど人間は、自分の意思でどこへでも行ける。
たとえ大切なヒトと別れたとしても、いつかは必ずまた会える。
ボクはそう信じて、船を降りて日本にやって来た。
そして今、かけがえのナイarkadaşとめぐり合えたばかりなんだヨ。
・・・もちろん、みんなのコト!

ボクはこのステキな出会いを、ステキな時間を大切にしたい。
もっともっと楽しいコト、みんなとしたい!
このあたたかなキモチは、冬が過ぎて春が来ても、
季節がどんなに移り変わったって、きっと一生変わらナイ。

ねえ、みんなはどう思う?
・・・ボクもそう思うヨ!
İyi günler♪♪

ついしん:
ハーイ! クラスメイトのマーベルくんのいけん!
五月はぜ~ったい、なにか隠してると思いマス!!
あやしいヨ~あやしいニオイがぷんぷんするヨ~~。
名探偵渡センパイ、あとはヨロシク☆☆☆

いつも明るくて陽気なマーベルくんだけど、
慣れ親しんだ環境から自分の意思で出てきたなんて、
その歳で、本当に勇気のいる大きな決心をしたんだね。
日本でとっても楽しそうに暮らしている君を見ていると、
いつかおじいさんも、君の気持ちを理解してくれるはずだって、
先生は信じてる。がんばれよ。

そういえば先週、とっても寒かった日があったよな。
準備室の温度計を見たら7℃くらいまで冷え込んでたよ。
今日はやけに静かだな、みんな早めに帰ったのかな?
と思って生物室に入ってみたら、みんなが一か所に集まってて。
覗いたら、マーベルくんが椅子に座ったまま寝てたんだけど。
それをいいことに「犬って冬眠するのなー」なんて言いながら、
みんなが自分のコートを君の肩にどんどんかぶせて、
マフラーを何重にもぐるぐる巻きにして、
なんだかもう、雪だるまみたいにされてて・・・。
さすがにこれは苦しいんじゃないかって心配したんだけど、
君は本当に幸せそうな寝顔で熟睡してるし。
・・・雪が降ったらどうなっちゃうんだろうな。

先生もね、みんな寒いだろうしストーブを置いてあげたいのは
山々なんだけど・・・みなまで言うまでもないよな?
そうなんだよ。電気ストーブ本体はあるんだけど、
なぜか中のヒーター部分だけ、いつの間にか抜き取られててさ。
ああ、うん・・・まあ、いつものことだからね。
気にしてないことはないけど、大丈夫。大丈夫だよ?
準備室には、羽のない扇風機の横に中身のないストーブが並んで、
ついでにEnterキーのないキーボードが4つくらい揃ってるよ。
あ、もちろんコーヒーをこぼしてるし動かないから。ハハハ。
ハハ・・・。

あ、そういえばこの日誌なんだけど。
みんなが毎週熱心に書いてくれるから、
ずいぶん残りページが少なくなってきてるんだよな。
誰か、替えのノートを買ってる人はいるのかい?

幸地


どうも。先週、名探偵として指名された渡だ。
名探偵だなんて、仰々しくもばかばかしい肩書きだとは思うが、
しかし、あの件については僕も前々から思うところがあった。
指名されたからには、それらしく推理してみようかと思う。

星浜祭でのケモミミ喫茶、そのブロマイド撮影。
あの日、執事に扮した僕たちを撮影したのは確かに天野さんだった。
これは疑いようもない事実であり、僕たち全員の共通認識だ。
全てのフィルムは、撮影者である彼女が所持している・・・。
そんな先入観に、ひとつの誤解が生じていたのではないだろうか?

わかりやすく言おう。

はたして天野さんは、天野さん自身の写真を撮ることができたか?
写真にこだわる彼女が、タイマー機能を使って撮影するはずはない。
つまり・・・彼女のメイド姿を撮影したフィルムが実在するのなら、
ほかに撮影者がいたはず。
「天野さん以外の撮影担当者」・・・。
そんなもの、心当たりは1人しかいない。
そうだ五月昴。お前のことだ。
天野さんと五月。彼らは写真にこだわるが故に、
決して借用などせず、必ず自前のカメラで撮影する。
ならば五月は、五月のカメラで撮った以外にない。
五月が秘密裏に所持するフィルムの中に、
僕たちが求め続けた一枚が収められている・・・。
その可能性は十分にあるだろう。

さらに証拠を探ることにする。
日誌の11月14日、五月の追伸を見て欲しい。
>美空のやつ、とにかく恥ずかしいからって例の写真出さねーし。
>でもまあ、本人がイヤならしょーがねーだろ?

この記述についてだ。
確かに以前、天野さんに写真のことを尋ねたら、
「恥ずかしいから、今はちょっと・・・」とはにかんでいた。
しかし先に推理した通り、天野さんが天野さん自身の姿を収めた
フィルムを所持している可能性は、かなり低いと考えられる。
天野さんは恥ずかしいから写真を見せないわけじゃない。
これは、ウソだ。

そしてさらに、僕の推理を裏付けるかのような台詞が続く。
>あれは幻の一枚ってことで。なっ。
五月が幻の一枚を「あれ」と指している。
彼は何を想像して「あれ」などと表現したのだろう?
そう。これではまるで・・・
「あれ」を見たことがあると言わんばかりじゃないか。

それとはまた別に、引っかかったことがある。
日誌をさらにさかのぼり、11月7日追伸末尾を見て欲しい。
>先輩、部誌に記録として残しておきたいので今度持ってきてくださいね。
>何よりも最優先事項でお願いします。

と、天野さんへ連絡していた星治くん。
先日、彼に僕の推理の妥当性がどれほどあるかを尋ねたところ、
「考えすぎじゃないですか」という一言で流した。
以前と比べて、ずいぶん態度が違うじゃないか?
幸地先生の言葉を借りるのであれば・・・妙にサッパリと諦めてないかい?
おまけに「たまには素直に人を信じるってことをしてみればいいんですよ」
なんて、薄笑い。
これは一体、どういう心変わりだ?

もはや疑いは確信へと変わっている。
五月、天野さん、そして星治くんは、
3人で結託し、何かを隠しているのだと。
さあ・・・五月昴。出してもらおうか?
その秘蔵フィルムを、僕たちの前へ。
もう言い逃れはできない。観念し











・・・・・・それどころじゃなくなった。
これは、活動記録としての日誌だから、
なるべく平常心で、書き残そうと思う・・・。

五月とマーベルの情報によると、
今日、天野さんが学校を休んでいたそうだ。
さらに、先ほどもたらされた幸地先生からの情報により、
天野さんが休んだのは39℃の発熱によるということが判明した。

だから・・・
つまり・・・・・・
その。



ごめん。



ちょっと様子を見てくる。



――星治へ
さっきメール送ったけど、一応ここにも伝言しとく。
渡とマーベルが美空の見舞いに行くっつって、
変身して、速攻で飛び出していっちまったから、
俺、ちょっと追いかけてくるわ。
あいつら様子見るって・・・部屋の窓からでものぞくつもりかよ。
アホか。病人だろ、寝てんだろ。
周りがさわいだら治るもんも治らねーっつーの!
まあ・・・気持ちは、わかんねーでもないけどさ・・・。
(五月)


今日に限って掃除当番で遅れるなんて・・・不覚です。
さっき電話で病院のお父さんに確認したら、
インフルエンザ検査は陰性だったということで、
ちょっとホッとしましたけど。
美空先輩・・・。
ここに書いたって、本人には伝わらないんですけど。
とにかくあったかくして、ゆっくり寝てくださいね。
先走った2人には、あとできつ~く言っておきます。
まったくもう!
(部長)

天野くんのご家族から学校に連絡があったよ。
「今日も授業はお休みします」って。
でも、熱は下がり始めているみたいなんだ。
とにかくインフルエンザじゃなくて本当によかったよ。
安静に休んで、しっかり治してきて欲しいよな。
ここのところ気温がぐっと下がったし、
夜遅くまで起きていたりすると体も冷えるしね。
みんなも体調管理には十分気を付けるんだぞ?

いやぁ・・・しかしまた、ヒヤヒヤさせられたなあ。
マーベルくんはね、天野くんのことが心配なあまり、
放課後になったら様子を見に行こうと思って、
朝からうずうずソワソワしていたらしいんだけど。
俺の「39℃」っていう報告がマズかったかなあ・・・。
まさか、普段はあんなに冷静な渡くんまで動揺して、
マーベルくんにつられて変身して窓から飛び出して行くなんて。
行動があまりに早すぎて、止める暇もなかったよ・・・。
2人の居ても立ってもいられない気持ちはよくわかるし、
もちろん、俺だって、すごく心配してるけどさ・・・。
みんなでいきなり押しかけていっても迷惑なだけだろ?
普段通り会話できるような体調じゃないだろうし。

・・・でも。
天野くんだって、熱が出て、体も弱って、
なんとなく心細いかもしれない。
みんなの声が聞きたくなる時だってあるかもしれないよな。
だから先生、ちょっと考えがあるんだ。
みんな協力してくれるかい?

幸地


先週、熱がだんだん下がってきたころ・・・。
夜、部屋の窓からニャゴマルが帰ってきて、
「はぁ~まったく、あいつらも態度がなっとらんにゃご。
このニャゴ様をパシリに使うとは何事にゃご!?」
なんてブツブツ言いながら、私に封筒を届けてくれたんだ。
ちょっと膨らんだクラフト封筒。
手紙が入ってるのかな? と思って開けてみたら、
中にはボイスレコーダーがひとつ入ってて。
なんだろうと思って、再生してみたら・・・もうビックリ。
風邪をひいた私のお見舞いにって、
UMA研究会のみんなで声を吹き込んでくれてたんだから!

ひどいカゼをひいちゃって、なかなか平熱に戻ってくれないし、
西ノ原先生にも「安静にしてなさい」って言われちゃって。
ずっと部屋で寝てばかりで、学校にも行けないから、
みんなと会えないのがさびしいなぁ・・・って思ってたんだ。
そしたら、こんなお見舞い! すっごくうれしかったよ。
起きてないでちゃんと寝なさいってお母さんに怒られちゃうから、
電気を消して、ベッドで横になりながらイヤホンでこっそり聴いたの。

でもね、聴いてたら・・・だんだん緊張してきちゃって。
変な話だけど・・・ちょっとドキドキしたと、いうか。
ほとんど毎日顔を合わせてるはずなのに、不思議な感じ。
いつもより、距離がぐっと近いような気がして。
息づかいとか、もう・・・耳がくすぐったくって・・・。
あ、それってマイクが近すぎただけかな?



★五月へ
五月って・・・ほんっ、とうに勝負バカだよね。
こんな時まで次の撮影の話? わかってるよ~。行く行く、行くってば!
あーあ。カゼのときくらい、普通に心配してくれたっていいのに。
・・・なんてね。
素直に、ちゃんと言う・・・ありがとう。
カゼが治れば写真が撮れると思ったら元気が出たよ。単純(*≧m≦*)
でも、そんなに照れくさそうに話さなくてもいいでしょ?
つられて、こっちまで恥ずかしくなってきちゃうから・・・。

★マーベルくんへ
あの・・・マーベルくんって、たまにそういうとこあるけど。
私、みんなのボイスレターは何度も聴き直そうって思ってたのに、
マーベルくんのメッセージは、うかつに聴けないかも・・・。
だって「ボクが添い寝してるのイメージしてね☆」なんて言われて、
それからずっと、あんな風に、ささやかれたら・・・・・・
もう、眠れるものも眠れないよ! ムリだよ~~!
ありがとう・・・でも下がりかけてた熱がちょっと上がっちゃった。
きっと、わざとじゃないんだろうなぁ。・・・だよね?

★星治くんへ
そっか、これって生物準備室でひとりひとり声を録音したんだね。
いつもみたいに茶々入れ合ったりしてたらまとまらないもんね。
あ、だからかな? いつもとちょっと違うの。
うーん、なんていうか・・・
部長じゃない星治くんが話しかけてくれてるような感じがして。
それって、ちょっとうれしいなって思ったよ。
たまには部活じゃないところでも遊ぼうよ。ケーキ食べに行こう!
ところで星治くん、最近ちょっとずつ背が伸びてきてるよね?

★幸地先生へ
このボイスレターは、先生が考えてくれたんですね。
こんなに素敵なお見舞いをしてもらったの、初めてです!
寝込んでる私のためにって、想ってくれたことがうれしかったです。
どうして先生は、いつもそんなに優しくしてくれるんですか?
甘えてばっかりじゃいけないって思うのに・・・
先生の声を聴いてると、だんだん眠くなってくるんです。
すごく安心しちゃってるんだろうなぁ、私・・・。
あっ。だからって授業中は寝てません! ホントです!

★渡先輩へ
渡先輩は、なんでもクールにサラッとこなせちゃう人なのに・・・。
私にイジワルするときだけ、どうしてそんなに熱心なんですか!?
そんな気取った声でいじめたって・・・私、ちゃんと知ってるんですよ。
マーベルくんと一緒に、家まで様子を見に飛んできたんですよね?
動揺してる渡先輩かぁ。すっごく見てみたかったな~(*^▽^*)
・・・うそ。そんなに心配させて、ごめんなさい。
でも、ちょっと・・・うれしかったりもします。
あこがれの王子様の頃より、最近の渡先輩の方が私は好きですよ!



おかげさまで、カゼはすっかり治ったよ。
ご心配おかけしました。
そして・・・本当にありがとう(*´▽`*)

本当はみんな、出来ることなら直接天野くんを訪ねて
お見舞いしたい気持ちでいっぱいだったんだけど。
大人数でお宅に押し掛けられないし、
かといってメールや手紙を大量に送り付けても、
熱が出てつらいのに、読むのも大変だろうし。
どうしようかなと考えて、ふと思い出したんだ。
昔、お互いの声をテープに吹き込んで郵便で送り合うっていう
映画を見たことがあったなあ・・・ってさ。
ボイスレターなら横になりながらでも聴けるかなと思って、
みんなに協力してもらったんだ。
少しはさびしさがまぎれたなら本当によかった。
昨日は天野くんが元気に登校してきた姿を見て、
先生もすごくホッとしたよ。
普段通りに学校で会えるのが、何より一番だよな。
おかえり!

夏からこれまでずっと、いろんなイベント尽くしで、
充実していたし楽しかったけれど、
ゆっくり休む間もないって感じだったからなぁ。
疲れもたまるだろうに、天野くんはがんばり屋さんだからね。
君が言うほど俺は、特別優しいわけじゃないけれど・・・
無理しないで、もうちょっと甘えてくれたって、
別に構わないんだけどな・・・。

あ。いや。
特に君だけってわけじゃなくて。
みんなだからね? 部員みんながってことだから。
ほんとに。うん・・・。


しかし、このノートも残り1、2ページくらいか~。
夏頃の日誌を読み返していると、
懐かしいような、つい昨日のことだったような。
赤ペンでコメントを返すのが毎週本当に楽しみでさ。
来週、最後のページにはどんなことが書かれるのかな。

幸地