流星☆コミュニケーションノート

不真面目な部員に頭を抱えた部長が始めた交換日誌。
幸地先生が血文字赤ペンでちょっとだけ返信します。

表紙の裏に書かれたルールは以下の通り。
担当の者は月曜に顧問に提出すること。 
顧問火曜に部室の所定の場所へノートを返却


こんにちは。UMA研究会部長の西ノ原星治です。
最近、僕は憂いています。
みなさん、放課後に生物室に集まってますけど・・・
部活動! ちゃんとしてますか!?
特に五月先輩とマーベル先輩、ゲームで盛り上がりすぎです。うるさいです。
実際、茶道部の女子から幸地先生に苦情が寄せられたそうですよ。
そうです、生物室の近くには茶室があるんです。知ってました?

ともかく、部員が遊んでばっかりじゃ部長の僕としても大変遺憾です。
だってマジメに活動しないと来年からの存続に関わるんですからね。
「ケモミミの部員がこれ以上増えたら逆にマズイだろ」とか、
いえ、そういう現実的な問題は・・・この際ちょっと置いといて。

僕はここにUMA研究会コミュニケーションノートを作成しました。
いわゆる交換日誌です。みなさんの部員としての自覚を高める目的があります。
ここに、各人の部活動についてローテーションで記録していってください。
携帯やパソコンが普及しているこの時代において実にアナログな手法ですが
そこがいいんです。幸地先生の世代ならわかってくださると思います、この感覚。
担当者のローテーションは、以下のように決めました。

1.西ノ原星治
2.五月昴
3.マーベル朝日
4.渡彗斗
5.天野美空
(1にもどる)

これが基本ですが、やむをえない事情で担当者が書けない場合は、
まあ・・・そのつど誰かが代筆するとか、色々考えましょう。
幸地先生は顧問なんですから、赤ペンでコメントを返してくださいね。

というわけで、次の五月先輩・・・「見なかったことにしよう」はナシですよ。
短くてもいいから、ちゃんとノートを書いてくださいね。絶対ですからね!
それじゃ、僕はアイスキャンディーを買って帰ろうと思います。
今日はスイカ・・・っていうより、ガリガリ・・・な気分かなぁ。

星治、いつもありがとう。本当にしっかりしてるよなあ・・・。
みんなも協力し合って、もう茶道部に怒られないようにしような。
日誌、楽しみに読ませてもらうよ!
幸地


えーーーーあーーーーーー
あ~~~~~~~~~わかったよ・・・・・・うるせーなあ。
となりで星治と渡が「書け書け」ってやかましいから書くんだからな。

って・・・・・・書いてるとこ、のぞかれたら書くに書けねーし!
どっか行けよ!
そーだよ。俺は意外とそういう、せんさいなタイプなんだよ。
「せんさい」って漢字で書け? いやいや、書けねーだろフツーの高校生は。
ケータイとかパソコンで変換できるならまだしも、これ直筆ノートだぞ?
・・・・・・・・・・・・。
「直筆」くらい書けるっつーの! 渡テメーどっか行け、マジでうぜー!
(だいたい「大変遺憾」とかサラサラ書ける星治がおかしいだろ)

あ! 思った。

俺とか星治は、日本生まれの日本育ちだから問題ねーけど。
・・・・・・マーベル、日本語書けんのか?
メールでは割とマトモな日本語送ってくるのは知ってんだけどさ、
アイツの直筆の日本語って見たことねーな。(転校してきて、すぐ夏休みだったし)
お、なんかちょっと楽しみになってきたかも?
マーベルのトンデモ日本語はもちろん、
ソレに対して幸地がどういうコメント返すのかが見どころだよな!
・・・・・・いや、それ以前に読めんのか? 読める言語なのか?
ふーん。よく考えてみると教師ってタイヘンだな・・・・・・
マーベル、手加減してやれよ。

ってことで、期待は次回に持ち越しで。俺はこのへんで。
あ? ぜんぜん部活動について書いてない?

・・・・・・あのな、ちょっとな、1回ツッコませてくれ・・・・・・

「今日も無事、ネコミミに変身しませんでした。すごくよかったです☆」とか書いてみろ
その時点でアウトだろバレバレだろもはや門外不出ノートだろ!!!

まず間違いなく俺たちのアタマが疑われる! 社会的にヤバくなる追い込まれる 俺にはわかる。
日誌を書くって記録残すってことだし。本末転倒じゃねーの・・・・・・。
2ページ目にして、このノートの行く末を考え直すのも手だと思うぜ、部長さんよ。

お昼ごろ、五月くんが星治たちと
ずいぶん楽しそうにしているなあと思ったら、
なるほど、さっそく日誌を書いていたんだね。

そのとき先生は生物準備室で、
休み明けに配る生物のテストを作っていたんだ。

うん。パソコンでね。作っていたんだけどね・・・・・・
日差しが強くて、すごく暑くてさ。
カーテンを閉めようと立ちあがったら、
机の上のコーヒーをガチャン!ドバッ!とね・・・・・・。
まあ・・・・・・いつものことなんだけどね・・・・・・
キーボードがコーヒーまみれだよ。
乾かしたら元通り動くかな?
うん・・・・・・動かないんだろうなあ。ハハハ・・・・・・。

あ、俺の不幸自慢を聞きたいわけじゃないよな。ごめんごめん!
五月くんは最初、本当~に面倒くさそうにうなってばかりいたけれど、
だんだん静かになって、そのうちカリカリ夢中になって
日誌を書き始めていたよね。
一度手をつけたことは最後までやり遂げる、
そんな五月くんの姿勢に、先生は花マルをあげたいと思うよ!

(ところで、五月くんは鋭いよなぁ。俺も言われて初めて気づいたよ・・・・・・。
けどまあ、その辺りはぼかして書けばいいんじゃないかな?
暗号を決めるとか。
ちなみに、せんさいは「繊細」という字を書くよ。
ちょっと難しいかな?)
幸地


Hello~~~!!!!
Merhaba!!
Benim adım Mabel=Asahi. Ben türküm.
Nasılsın? Ben? İyiyim, teşekkür ederim!
Siz nasılsınız?
Tanışrığımıza memnun oldum.

Ama, hikaye değişiklikler...
Siz arkadasın var mı? (* ´艸`)
・・・・・・Vay be!? Allahallah! EeeeeE!!?

――みんなが理解できる言語で書いてください・・・(部長より)

だって~~~センセこないだ言ってたよ~~~~~?
ボクたちのワンニャン、ぼかしてかけばいいネって。
だから! みんなトルコのコトバでノート書けばいいと思ったヨ♪
ヒミツのあんごうだネ! うっわ~~それってヒミツのちかそしき!?
カッコイイー!! ねーねー、そーしヨ~~~~~~!!♪♪♪

ってネ、いい考えと思ったのに、せーじにダメっておこられた・・・。
ム~~~~~~~~だよっ ▽>ェ<▽ノシ ムームーム~~~っっ

それになにさ!? トンデモ日本語って??
ボクそんなに書けないコトないんだからネ!
文法ほとんどまちがってないし、かん字も書けてる。ほらほら。
ねー? でっしょ~^^? はい、ハナマル♪
まぁ、ボクは音でおぼえてる日本語おおいカラ、
へんかんきのうナイと、チョットだけこまっちゃうケド・・・
でもでも、コトバ書けないとテストうけられないのにさっ。
ボクとてもまじめなせいと~~! ちゃんときまつテストうけたもん。
五月はイジワル~~~イジワルにゃんこだヨ→→→→(=`ω´=)ニャー
渡センパイ、月にかわっておしおきにゃんこしちゃっテ!
ちょーーーーーーーーーーきたいしてるからネ!!

・・・なーんてイロイロ言っちゃったケド。
ボクのほんとうのキモチは、もちろん、いつだって・・・
Sizi seviyorum!! だヨ♪ İyi günler♪♪


P.S★彡
ところで・・・青い空、青い海、あつ~い夏まっさかりだよネ。
こんど、みんなで美浜に泳ぎに行きたいナ~~~・・・

ってゆーか、もーガマンできナイ! スナオに言っちゃう!

美空の水着がみたい! と~っても、みたい!!

みせて? う~ん・・・ダメ??

いやあ。すごかったね・・・。
「嫌な予感しかしないんですよね」なんて言ってた星治が、
マーベルくんが書いたページを開いた瞬間、ピシッと凍りついて。
ご機嫌で帰ろうとしたマーベルくんの首根っこをつかまえて
「書き直してください」って頼んだんだよな。すごい気迫で。
でも書き直された日誌をチェックした星治は、
ついに「もういいです・・・」って、ギブアップ。

あの星治を、あんな短時間で脱力させられるなんて、
ある種の才能だと思うんだよ、うん。
先生もトルコ語のままだったら正直どうコメントしようかなって・・・
あ、いやいや。いいんだよ? トルコ語の日誌も新鮮だしね。
これからも楽しくて自由なマーベルくんならではの日誌を書いてほしいな。
(あ、訳を書いてくれると助かるよ!)

え~っと、あとは追伸についてだけど・・・
確かに、すぐ近くに星降美浜っていう素敵な海水浴場があるのに、
みんなで一度も泳ぎに行ってないのはもったいないよな。
先生も泳ぐのは賛成だよ。最近本当に暑いしね。うんうん。

・・・その、女子の水着については先生、うっかり言及しちゃうとさ、
もしかすると、つまり、偉い人に怒られちゃうかもしれないからね?
男子のみんなの説得にまかせるよ! がんばれ!
幸地


やあ、こんにちは。3年の渡彗斗です。
先輩としてお手本になるよう、恥ずかしくない文章をつづりたいですね。

・・・と、爽やかに当たり障りのない日誌を書いて終わらせたいのは山々だが。
僕が最初に日誌を担当するこの機会に、確認しておきたいことがある。
そうだ。星治くん、部長である君にだよ。
この日誌担当のローテーション・・・謀ったとしか思えないんだが?

●星治くん⇒五月
まあ、妥当な組み合わせだ。
義務を完遂するよう、日誌上でも星治くんがクギを刺すべきだろう。
(何せ、この間の五月は3行書くのに30分もかかったんだ) ●五月⇒マーベル
一見、無難な組み合わせだが・・・
君たち、普段からやたらとお互いを挑発してはじゃれ合ってるだろ?
日誌上でもいつも通り同じことをやる。するとだな・・・
●マーベル⇒僕
五月の内容を受け、彼のやや特殊な思考プロセスが全速力で走る走る。
おまけに意味不明で解読困難な文字の羅列のおまけつき。
この内容をふまえて日誌を書けと言われても。難易度五つ星。
●僕⇒天野さん
唯一、真面目にまともにまっとうに部活動内容を記述するだろうこの僕が、
彼女を困らせるわけがない。まず間違いない。
●天野さん⇒星冶くん
星治くんは、天野さんの書いた内容に対して、
嬉々としてレスポンスをつける・・・・・・

ここまでやって来た以上、ローテーションの再検討をしろだなんて
そんなワガママは言わない。ああ、言わないさ。
しかし星治くん。ここはハッキリしておこうじゃないか。

君、僕を一番難易度の高い順番に配置して、
自分は一番おいしい所に収まっただろう?

そこはかとなく、僕に対する敵対心というか、
もはや部員いびりにも似たものを感じるんだ・・・!

――自意識過剰ですよ、先輩。(部長より)

――まあ、まあ(笑)(幸地)

追伸1:
前回の日誌、マーベルがいつまで経っても訳を書かないから、
僕が辞書を借りて訳してみた。参考になれば。
「こんにちは! 僕はマーベル朝日です。トルコから来ました。
お元気ですか? 僕? 僕はとても元気です、ありがとう!
みなさんにお会いできて嬉しいです。
ところで話は変わるけど、みなさん、彼氏彼女はいる?
・・・えー! うそー! ほんとに~!?」
・・・どさくさ紛れに、何をプライベートなことを訊いてるんだ、君は。

追伸2:
美浜に海水浴に行くのはいいが、僕は泳がないぞ。
肌が焼けるのがイヤなんじゃない。それもあるけど、そうじゃない。
子供のころから、海やプールに入ると風邪をひく体質なんだ。
風呂や温泉は平気なのに、冷水だけはどうしてもダメみたいで・・・。

いつも感心するんだけれど、君は本当に真面目で、優しい子だね。
部員どうしの関係性を的確に指摘できるのは、
普段から渡くんがみんなをしっかりと見つめているからこそだよな。
なんだかんだで結果的にそうなっただけ、って君は言うだろうけど、
文章のあちこちから、みんなに対する深い愛情を感じるんだよなあ・・・。
わざわざマーベルくんの翻訳までしてくれて、ありがとう!

ところで、君が水に弱いっていうのは知っていたけど
まさかそこまでとは思わなかったよ。
せっかく美浜町に住んでいるのに、ちょっと残念な体質だね。
でも夏の海なら水温は高めだし、体づくりも兼ねて
この機会にチャレンジしてみたらどうかな?

あ。ちなみに先生、体だけは丈夫なんだよ。
いくら海に落ちても川で滑っても沼にはまっても池に沈んでも
脱衣所でムカデに刺されても温泉でサルにひっかかれても
そのあと謎の熱が出て手足がかゆくて腫れて入院沙汰になっても
先生はこのとおり、元気で学校に通ってるんだ。
これだけは自慢できることかなあ。ハハハ。

・・・いや、不幸体質がじゃなくて、体が丈夫なことがだよ?
幸地


――五月先輩、みんながわかる言語で書いてもらっていいですか?(部長)

――ばっちぃにくきゅ~で日誌書いたらダメなんだヨ?
おててあらってキレイキレイしよーネ!(マーベル☆)

―――あ、そっか~。これって俺のしわざだったのか~~。
いやー悪い悪い。つい手がすべって・・・
ってバカーーーーーーーーーーーー!!!(五月)

――五月先輩のノリツッコミ・・・・・・(部長)
――まさかのノリツッコミだヨ・・・(マーベル☆)

――君たち、いい加減に本題を話し合うべきじゃないのか?
そう・・・天野さんがネコになってしまったという、この緊急事態についてだよ。
耳やシッポが生えるだけじゃなく、まるごとネコ化するなんて。
まったく大変なことになったな。(渡)

――この筆跡は僕たちが日常使用している言語とは異なりますが、
どうもアトランダムな配列ではないようです。
意志をもって何かを伝えようとしているんですね。
果たして美空先輩は僕たちに何を伝えたかったのか?
UMA研究会の総力をもって解読に臨みましょう。
ひらがな10文字前後で翻訳をお願いします。(部長)

――はんにんは かしおぺあ(五月)
――まーべるくん だいすき(マーベル☆)
――かいねこに してください(渡)
――足跡ひとつでよくそんなに妄想できますね。(部長)

あーーー!
私と先生がニャゴマルを追いかけて捕まえてる間、
なにしてたのかなって思ったら・・・ひどい、みんなで遊んでる!
私はネコになんてなってないし、犯人はニャゴマルです!!
渡先輩のいじわる・・・星治くんまで~。
でも確かに、しつけ不足だったのは私の責任だよね・・・。
日誌を汚しちゃってごめんなさい。
後でうーんとしかっておくから!

落ち着いてからニャゴマルくんに話をきいたんだけどね、
天野くんがなかなか日誌を書かないから業を煮やしたっていうんだよ。
それで生物準備室にあった墨汁を使って、犯行に及んだと・・・。
まあ、日誌を代筆するくらいならいいんだけどさ、
そのあと生物室から廊下までを逃げ回って、墨汁まみれにしてくれて。
これは、ちょっといただけなかったよなあ。
彼は空を飛べるはずなのに、わざと床を走っていたからね。
みんな、掃除お疲れさま!

ちなみに彼が肉球で伝えたかった内容は、
「このニャゴ様の手にかかれば、
不可能なことなどないにゃご。
ニャゴのメッセージが読めない
やつなどオロカモノにゃご~」
だそうだよ。
・・・UMAのしつけって、大変そうだなあ。

まあ天野くんはそう恐縮しないで、あらためて日誌を書けば・・・
って先生は思ったんだけど。渡くんと星治が、ね。
「これは管理不行届だ」とか「責任を取るんですよね」とか
もっともらしい理由を並べたり、あれこれ交渉したりした末に
「バツとして、美浜に海水浴に行って可愛い水着を着ること」
って、天野くんに約束させたんだよな。
普段は嫌味を言い合ってる2人が結託すると・・・いやあ、すごいね。
頼もしいというか、さすがは男子というべきか・・・。

というわけで今度の日曜日は海水浴に決まったね。
いや~楽しみだなあ。これで暑さも乗り切れるよ。
・・・あの、楽しみなのはみんなで泳ぐことがだよ? ほんとだよ?
幸地